REPORT

2002年3月19日
展覧会「森万里子ピュアランド」 東京都現代美術館にて

森万里子という作家をはじめて知りました。

コスプレ風の姿をした自らをモチーフにし、現代日本社会での女性の有り様を風刺的に表現した初期の(といっても10年ほど前でしかありませんが)写真作品。
同じく自ら登場しつつ日本古来の仏教的世界観に自分の感覚をもりこんだ作品。そしてCG、映像、はては立体映像や立体音響など、最新の技術を使って制作された最近の作品まで、作品数は少なかったものの、それぞれおもしろかったです。

天女に扮してマンガ的なCGキャラクターに囲まれながら「神様に会いたい、、」と囁くように歌う3D(立体視)映像作品「ニルヴァーナ」などはかなり趣味的でキッチュに感じましたが、その元となった、曼陀羅から着想を得たという、風、火、水、土をテーマにした、4点シリーズの大型の写真作品は、世界観の広がりが感じられて良かったと思います。

また、今回の展示の目玉ともいえる「ドリーム・テンプル」は、法隆寺の夢殿にインスピレーションを得て制作されたという大型の建築的作品で、実際の夢殿より小型ですが彼女なりのファンタジックさとハイテクを融合させたものとなっています。
主に、ガラスと、パールホワイトに塗装された金属で作られており、全体にクリスタル調のイメージを持っています。
虹色に光るガラスの階段をのぼると、建物を囲む廊下ごしの正面の扉は電動式で、開いている時は透明で、閉まるとスリガラス状(半透明)に変化します。その扉をくぐり中に入ると、ひと一人が座って入れるドームを内包しており、観覧者はここに一回につき一人だけ入り、前面の半球状ドームに投影された4分44秒の映像を、ヘッドホンで3Dサウンドを聴きながら見るようになっています。
現代の瞑想空間といったところのようです。
この映像投影、立体音響のシステムまわりは、もう少し検討していく余地があるように思いましたが、それまでの作品と比べ、作者が作品中に出てこない点でターニングポイントとしての意味を持つと思われ、また、こういった体験型の作品を現実化させたところがすばらしいです。

ドリームテンプルに至る清めの意味合いで作られたという、「ガーデン・オブ・ピュリフィケーション」は、枯山水をモチーフにしたインスタレーションで、偶然にも、前回京都に行った折に枯山水などの庭園を見てまわったのですが、安倍清明ブームといい、今の日本社会は、このような内省的精神性を求めているようにも見えます。

今回の展覧会を見ていて不思議に思ったのは、自分の世界を表現することに夢中になっている美大生といった雰囲気(作品が)のこの女性が、現代も過去も宗教も先端技術も軽々と取り入れ、自分の中でMIXし、自己愛的または趣味の露出的でありながら、楽々と社会とコミュニケーションしているように見える点です。

表現行為をらんぼうに、自己表現(自己の内面、精神性の露出)とエンターテイメント(多くの場合、大衆に向けた経済活動を伴うコンテンツ)に分けるとすれば、この作家は、前者が基本(出発点)となっていると思うものの、本人のある種のアイドル性も幸いし、充分にエンターテイメント性を持っています。また、ニューヨークに在住して作品を発表し続け、日本、フランス、イギリス、アメリカでの個展開催、ヴェネツィア・ビエンナーレ入賞、プラダ財団による作品の所蔵、など、初期の写真作品でとどまらずに、自分の表現をここまで変化発展させ社会性をもたせた力量、行動力はすばらしいです。

今後本人が望めば、作品の商品化(商品化前提の作品作り)などの方向性でも力を発揮しそうです。
そういう非凡さを感じさせるものがあります。

ドリーム・テンプルほか多くの作品は、ファッションブランド、プラダがギャラリー活動のために設立したプラダ財団所蔵となっており、ファッションメーカーが本格的に現代美術のギャラリーをやっていることに驚きましたが、ファッションの世界が、クリエーションとビジネスのせめぎあい叉は融合の先端分野の一つであることを考えると、興味深いものがあります。
森万里子さん本人も文科服装学院と、イギリスのチェルシー・スクール・オブ・アート出身です。

ドリーム・テンプルの観覧は、一回につき一人なので、事前予約と当日申し込み先着順の一日合計60名となっており、美術館の開館前から入り口に申し込みの列ができていました。
東京都現代美術館HP
追加情報




2003年5月10日から7月31日までNY、マディソンアベニューのIBMガーデンにて森万里子さんの「Wave UFO」と題された大型の作品が展示されたようです。外形の制作はフェラーリとのことで、そのスケールとエネルギーはすばらしいです。
この作品のカタログ(作品集)が販売されています。(六本木・青山ブックセンターにて見かけました。2004年4月3日現在)

六本木森美術館ミュージアムショップにて、森万里子さんと同ショップ共同開発(製作)の携帯用のお茶セット「ティー・カプセ ル」が販売されています。
乳白色のつぼ(?)に、オパールガラスの茶碗などのほかお茶をたてる一式をまとめた実用品です。
サイン入り限定50個294000円となっていました。

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